Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第15章 鈍感少女の青春記録Ⅲ《青城》
夕方過ぎまで部活をやり、チラホラと部員達が帰宅し始める。さて私も、と体育館を出て、校門に向かったその時。「みゃあ」と鳴き声が聞こえた。
『ネコ!?』
バッ、と辺りを見回すと、茂みの向こうから1匹の三毛ネコが姿を現した。みゃあみゃあと鳴きながら、足に擦り寄ってくる。
『かぁわいぃ〜っ!』
その場にしゃがみ、もふもふと撫でる。ノラの割には毛並みがきれいだ。
ん?野良の割には!?もしかしたら、誰かが定期的に手入れをしているから?この近くで!?
『ねぇ、キミ京谷さんって知ってるかい?』
「みゃあ」
パタパタと尻尾を揺らす。
『連れて行ってくれるかな?』
「みゃん」
またまた尻尾を揺らす。その三毛ネコちゃんは伸びをしてくぁっとアクビをすると、しなやかに歩き出した。くるっと振り向いて「みゃ」と鳴く。ついて来て、ってことかな?
今の時期は一番陽が長い。だから7時を過ぎた今もまだまだ明るく感じる。ほんのりと明るい空の下、私は三毛ネコちゃんを懸命に追いかけた。
破れたフェンスの間をすり抜けて学校の裏に出る。そこから住宅街を歩き、低木の隙間を這い、塀を乗り越え、いくつもの角を曲がる。私の息も上がってきた頃、ようやく開けた場所に出た。
案内をしてくれた三毛ネコちゃんは、「みゃ」と一鳴きすると、尻尾をフリフリしながら駆けていった。
開けたそこは、以前は公園だったようだが、今はすっかりさびれてしまっている。小さなあずま屋の下に、見慣れた制服の影を見つけた。
『あ、うちの制服…!』
その影に向かい、一歩踏み出す。じゃり、と砂の音がして、それに気付いたのか影が振り向く。ギロッ、と鋭い視線を投げるその男子は、及川さんに見せられた写真にそっくりで。つまりは京谷さんにのようだった。
『あ、あの……』
「チッ………何の用だよ」
っうわぁ、見事なまでの舌打ち。しゃがみ込む京谷さん。その周りには、ネコだけでなく犬もいる。
「何しに来たんだよ」
『えぇと、及川さんに頼まれて』
「及川さん?」
眉間にシワを寄せ、立ち上がる京谷さん。ポケットからサイフを取り出したかと思うと、そこから3枚、お札を取り出して私に押し付けた。
「おら、これで帰れ」
『っな、なんで…!?』
「バレーなんかしねぇよ」
吐き捨てるような言い方に、私の中で何かが切れた。