Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第15章 鈍感少女の青春記録Ⅲ《青城》
鈍感少女の青春記録Ⅲ
高2男子とStray Pets
3年生にとっては最後のインターハイ。絶対王者白鳥沢にはあと一歩及ばず、決勝戦で惜しくも破れてしまった。春高県予選の決勝での再戦を誓い、そして次こそ全国に行くため、練習に熱が入る、6月のこと。
いつも通り基礎練習をこなしていた時、矢巾さんの声が体育館いっぱいに響いた。
「嫌です!俺は、そんなの嫌です!」
イヤです、と2回繰り返す。不穏な空気を感じです振り向けば、及川さんをすごい剣幕で睨む矢巾さんの姿があった。いつもの優しくてほわほわしている矢巾さんからは、1ミリも想像できない。
「矢巾にしか頼めないんだって。お願い!」
「嫌なものは嫌なんです!たとえ及川さんの頼みでも、俺は京谷とは相容れないんです!水と油なんです!」
"京谷"という聞き慣れない言葉に、首を傾げる。隣で事態を傍観する岩泉さんに、コソッと耳打ち。
『あの、"京谷"っていう人は……?』
「あー、知らなかったか」
ガシガシと頭を掻きながら「すまん」と謝る岩泉さん。それから、その人物について話してくれた。
京谷賢太郎というその人は、青葉城西高校の2学年に所属、またバレー部に入っている。にも関わらず部活に来ないのには、どうやら去年の先輩との因縁があるらしい。暴力沙汰などを起こし、半年の部活禁止になってしまったのだとか。
『……で、もうじき期限が終わるんですか?』
「いや、それは確か夏休みだ」
なら、なぜ。そう思った私の心を見抜いたのか、岩泉さんが苦笑しながら言った。
「クソ川のことだ、俺らが抜けた後も矢巾がうまくやってけるようにしたいんだろーよ」
なんだ、及川さんもちゃんと後輩について考えていたのか。少しだけ、ほんのすこぉしだけ見直した。
後輩を思う及川さん。そう思うと、爽やかスマイルも3割増に見えてくる。こう見ると及川さんってカッコイイのかな。ニッコリと笑う及川さんに、なぜか胸が"キュン"と鳴る。
が、次の瞬間、
「俺としては矢巾が狂犬ちゃんを手懐けてくれたらラクだなぁって思っただけなんだけどね」
ヘラヘラと笑う及川さん。全力で前言を撤回したい。ってか私の胸キュン返せ!