Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第14章 ★桜の季節∶花巻
【天草 side】
それがあたしの、初めてのエッチだった。長年の片想いが通じたものの、貴大とはすぐに離れ離れになってしまった。あの後、あたしと貴大は約束を交わした。
"4年後に、またあの公園で"
あたしは宮城の大学で、貴大は県外の専門学校で。それぞれの場所で、それぞれに全力を尽くそうと。小指を絡めて口遊んだ"指切りげんまん"。歌い終わって、お互いに裸なのに気付き、大爆笑した。
それから不意に泣き出したあたしを、貴大は背中を撫でて慰めてくれた。気の利いたことの1つも言ってくれなかったけど、顔を寄せた貴大の胸から伝わる鼓動が、それが心地良くて。気が付いたら朝だった。
『貴大、覚えてるのかな……』
あの日から、一種のケジメとして、貴大とは一度の連絡も取っていない。もし本当にお互いを好きなら、今まで堪えてきた分、これからも大丈夫だ、と。
地元に残った岩泉と松川の教えてくれる話から、貴大のその後についてを知った。彼から聞かなくても、元気なのが分かれば、それでいいと思った。
そして今日、あの日から4年が経った。公園に向かうあたしの足は、何度も止まりかけた。
もし貴大がいなかったら。
もし貴大が来なかったら。
そう考える度に足が止まりかけ、それをなんとか動かした。そうして辿り着いた、公園。ひらりと目の前を桜の花びらが掠めた。手に取って、日にかざす。
そうしてあの日、あたしが漕いでいたブランコ、桜の木の下のブランコに、貴大は、いた。
『たか、ひ、ろ……』
まるで蚊の鳴くような、囁くような小さな声。それに気付いた貴大がこちらを向く。ほろり、涙腺がほどける。
ピンクだった髪は明るい茶色になってて、両耳にはシンプルなピアスが付いてて、モノトーンコーデがすごく似合ってて。貴大がいるってことが、まるで夢を見ているみたいで、その場に立っているのがやっとだった。
歩み寄ってきた貴大に、躓きながらも飛び付く。相変わらず背の高い貴大は、しっかりとあたしを受け止めて、
「ただいま、星菜」
『おかえり……っ貴大!』
早咲きの桜の下、そっと、キスをした。
The End.