Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第14章 ★桜の季節∶花巻
【花巻 side】
呆気に取られる俺を置いて、星菜は部室を飛び出していった。シンとなったのも束の間、誰かのため息が部屋に響いた。
「マッキー、それ女の子に言わせることじゃない」
「天草、泣きそうだったぞ」
「追いかけるべきだろ」
及川達に言われ、ハッとする。あいつ、寒いのにコートは置きっぱだしカバンもそのままだ。全く、最後の最後まで世話の焼けるやつだな。
「……悪い、抜けるな」
部室を飛び出す背中に、及川がお幸せにー!と叫ぶ。何がだよ、と思ったが、とりあえずは星菜を探すことに集中しよう。
靴がない、つまり学校にはいない。じゃあ家か?いや走っても10分以上かかるから違う。なら、
「あの公園か……っ!」
予感は的中。ブランコとベンチ、それに滑り台があるだけの公園、随分と早咲きの桜の木の下で、星菜は1人ブランコを漕いでいた。
「星菜っ!」
『た、貴大!?』
俺に気付くと慌てて逃げようとする星菜。すぐに追い付き、逃げないように後ろから抱きしめた。
「つっかまーえた」
『やだ、離して、離してよ!』
「離さねぇよ?」
ワントーン低く言うと、腕の中で星菜がビクリと震えた。それから小さく嗚咽を漏らし、泣き出す。どうしていいか分からず、とりあえず少し強く抱く。星菜は反転したかと思うと、抱き付いてきた。
『ふえぇん、っく、う、うっく、えっ』
「どーした?痛い?悲しい?ツラい?」
『っぜ、全部…っ』
全部、とはどういうことか。
『貴大、がいなくなっちゃう、から、心が痛い。離れ離れに、なっちゃ、から、悲しい。っあと、貴大があたしのこと、っ何も、思ってないから、ツラい…っ』
「お前っ……」
そんなこと、考えていたなんて。ずっと隣にいたのに、どうして気付けなかったのか。後悔が募った。
それに1つ、間違っている。
「お前のこと、何とも思ってねぇ訳じゃねーぞ」
『ふぇ…?』
顔を上げた星菜。俺を見詰める2つの瞳が、涙に潤んでいる。それがどうしてか、ひどく色っぽく見えた。
次の瞬間、唇を重ねていた。