• テキストサイズ

Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》

第14章 ★桜の季節∶花巻




結局及川の言葉の真意が分からないまま、宴会まがいのパーティは続いた。いつの間にか始まっていた"王様ゲーム"により、国見は女装させられ、岩泉は及川のほっぺにキスをさせられ、大変そうだ。

ちなみにあたしは、なんの罰ゲームも受けてない。


『ねぇ、そろそろ帰りたいんだけどー?』

「いーやダメだ」

『貴大くーん、帰らせたまえー』


後ろから貴大の首に手を回し、そのまま体重を掛けてやる。バカお前首締まる…と苦しそうだったので緩めると、黒い笑みを浮かべた貴大と目が合った。


「やっぱ罰ゲーム、やってから帰れ」

『なんでよ!』

「いーからいーから」


無造作に割り箸の入れられたコップに手を伸ばす。王様だーれだ、と棒を引く。最後(恐らく)の王様は、残念ながら貴大だった。


「じゃあ星菜」

『なんで指名!?』

「好きなヤツの名前言えー」

『だからなんで!?』

「王様の命令は?」

『……ぜったーい』


やる気のない声で返事をすると、ゲラゲラと貴大は笑い出した。こういうとこ、ほんとタチ悪い。小さい頃からなんにも変わってないんだもんね。

でも言う訳にはいかない。小学生で恋が芽生えて、それがゆっくり育って、随分長い片想いになってしまった。ちょっとチャラくて、でも責任感強くて、そのくせ人をからかうのが好きで。そんな貴大が、好き。

でも、言わない。

言ったところでもう、手遅れだから。

どうせ貴大は県外にある美容師の専門学校へ行ってしまう。ここまま宮城に残るあたしとは、どう考えても物理的に遠すぎるのだ。


「ほーら、早く言えー」

『ヤだ』

「星菜、言わねーとキスすんぞー?」

『ヤだってば!』


どんっ、と貴大を押す。


「ンでだよ、隠すもんじゃねーだろ。最後だし」


最後だし。

その言葉が、胸を抉る。痛い。痛いよ。

心が、痛いよ。


『……っ、…………だもん……』

「え?」

『あたしが好きなの、っ貴大だもんっ!!』

「は?おい、待てよ!」


貴大の制止を振り切り、部室を飛び出した。もう、どうやって貴大と話したらいいか分からない。今までの関係が壊れてしまったから。そうしてガムシャラに走って、気が付けば帰り道の公園にいた。小さい頃、よく貴大と遊んだ公園。

さっきは全く流れなかった涙が、視界を覆った。


 
/ 188ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp