Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第12章 ★あなたの温度:菅原
【菅原 side】
『孝支、さん……?』
か細い声に、ハッと我に返る。俺は一体何をしているのか。目の前の星菜は、唇を真一文字にキュッと結んでいる。俺を映して揺らぐその目は、不安そのもの。
なんつー顔を、させてるんだ。
「ごめん、星菜……」
『い、いえ、大丈夫です、全ぜ…』
「無理しないで。恐かったろ?」
無理矢理笑ってるのがバレバレの笑顔。その髪をそっと撫でてやると、みるみるうちに目からは雫がこぼれる。ほんと、俺ってバカ。
『ごめ、なさぃ…っこ、しさんって、わかってる、のにっ、恐くて…急に、ふあん、なっちゃ、てっ……っく、うぇ…ひっく…』
「ごめん、ほんとごめん。悪いの俺だよ。初めてなのにキスして。しかも深い方の」
我ながら最低だ。女子はファーストキスを大切にするとあれほど聞いていたのに。しかも自分の欲に負けて押し倒して、あげく彼女のこと泣かすとか。何やってんだよ。マジで。
「俺さ、家に星菜が来たいって言ってくれた時さ、ちょっと期待しちゃったんだ」
ごめんな、ともう一度謝ると、星菜はふるふると首を横に振った。それから俺の首に腕を回し、ぎゅっと抱き付いた。
『そなこと、なぃ、です…っ』
「星菜……とりあえず、起きるか?」
そう訊くと、星菜はまた、首を横に振る。ぽそりと呟いたが聞き取れず、聞き返す。と、とんでもない発言が耳に飛び込む。
『や、です…っこの、まま、が、いぃ…』
「うん、俺も嬉しい。星菜がこうしてくれるのは嬉しいんだけどね。その、理性が…」
『理性とか、いらな、です……』
「は……?」
意味が分からずにいると、もう一度。
『そんな理性、いらないっ、です…』
「………それは、わざと?」
そう、訊いたのが間違いだった。
『あの…胸、ちっちゃいですけど……』
「あーもう!いい、分かったから!」
ふぇ?と呟く星菜の口を咄嗟に塞ぐ。ったく、これ以上、煽ってくれるなよ。
「嫌って言っても、止められないと思う」
『大丈夫ですよ。だって私、こんなに孝支さんのこと大好きなんですもん』
ふにゃっと笑う星菜。愛らしい彼女に小さく微笑んで、開始の合図のキスをした。