Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第12章 ★あなたの温度:菅原
学校の前の急な坂の一番したに、烏養コーチのおうちでもある坂ノ下商店がある。菅原さんはそこで中華まんをご馳走してくれた。いつものように他愛のない話をしながら、菅原さんは私を家まで送ってくれる。
車道側を歩いてくれる気遣い。くしゃりと笑う人懐っこそうな笑顔。明るく朗らかな声。繋いだ手から伝わる温度。その全てが愛しくて、大切で、失いたくないと強く思う。
こんな気持ちは、菅原さんに出会うまで知らなかった。菅原さんは、私にたくさんの素敵なことを教えてくれたんだ。
「あーあ、もう天草さん家着いちゃったな~。もうちょっと話したかったのに」
そう言う菅原さんは本当に残念そうで、私もちょっぴり寂しいと思った。
『また明日になれば会えますから』
「だな!」
にかり、と笑ってから回りをキョロキョロと見渡す菅原さん。手招きされたので、1歩前に踏み出すと、ふわり。優しいお日様の匂いが私をすっぽりと包み込んだ。
『すっ、すがっ、菅原さんっ///』
「なーなー、名前で呼んでみて?孝支って」
『いやっ、あの、ここ家の前で…っ///』
「知ってる。家の人にバレないうちに、早く。じゃないと離してあげないぞー」
いたずらっ子のように頭上で笑う。まったくもう、こんな無邪気に言われちゃったら敵わないなぁ。怒る気だって失せてしまう。
そっと背中に手を回し、胸に顔を埋める。
『こ、孝支さん……///』
「なーに、星菜?」
『よっ、呼んでって言ったのそっちです!』
「やー、いいね。しかもちょっと照れてるのとか、星菜マジで可愛すぎるべ」
もうっ、と呟くと、ごめんごめんと聞こえた。そっと熱が離れる。目の前の菅原さんは、照れ臭そうに頭を掻いた。
「えーと、じゃあ、また明日な」
『はい、おやすみなさい』
去り際、何度も振り返って手を振る姿が、丸で小さい子みたいで可愛らしい。お兄ちゃんがいたらこんな感じかな、とか、友達といるみたいだな、とよく思うものだ。
くすぐったくて、でも、あたたかくて。カレカノしてるなぁなんて、思ってみたり。
こんな日常が続けばいいなんて思った私。その発想がぬるま湯も同然だったのを知るのは、明日だと、今の私は気付かない。
菅原さんも、"男"なのに―――