Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第11章 チョコと幼馴染み:及川
ようやく解放されると思った放課後。狙ったように女子に話し掛けられる。ほんとに、俺もういい加減イライラしてきたんだけど。
軽くあしらいながら教室のドアを開けると、そこには岩ちゃんが直立していた。
「あ、岩ちゃん!待っててくれたん…」
「ンなワケあるかボゲェ」
「ダヨネー」
うんまぁ、いつものことだよね、ウン…
「そういやチョコ、星菜に貰ったか」
「んーん、まだ。朝に会ったっきり星菜のこと今日見てないんだもん」
「そーかよ」
それだけ言うと、さっさと帰ろうとする岩ちゃん。ってことは岩ちゃんは星菜にチョコ貰ったのか。本命なのかなぁ、それ。
そう惚けているうちに、スタコラと先を歩く幼馴染み。慌ててその背を追うと、岩ちゃんはすごく複雑そうな顔をしていた。
「岩ちゃん?」
「星菜、探してたぞ」
「星菜が?誰を?」
「ボゲェ、クソ川マジでバカだろッ!」
俺の胸ぐらをむんずと掴む岩ちゃん。
「星菜ッ、てめぇの分のチョコレート大事に持ってきてんだよッ!なのにてめぇが女子に囲まれてヘラヘラしてっから!!」
「分かった、岩ちゃん俺、分かったから!」
岩ちゃんの手を制服の襟から剥がす。俺を睨む岩ちゃん、その目は先程よりも、怒りの色が薄くなっているようだった。
「俺、行かなきゃだね」
「まだ間に合うぞ。走れクソ川ッ!」
「おう!」
階段を飛ばし、通学路を全力で駆ける。岩ちゃんのお陰で目が覚めた。俺が欲しいのはやっぱり、星菜のチョコなんだよ。
走り去って行き見えなくなった及川。去っていった方向を見、俺はため息を吐いた。
「ったく。どっちも分かりやすいんだよ…」
星菜が及川を好きなのも、及川が星菜を好きなのも。俺から見たら、まるで小学生の恋愛ごっこか何かだ。
星菜が毎度及川を見て泣きそうになんのも、及川が星菜のチョコを貰えなくてガッカリすんのも、もう見たくねぇ。
だからお前ら、
「さっさとくっついちまえよな」
「岩ー、けーろぅぜぇー」
「おー!」
そんな呟きは、後ろからやって来た花巻と松川の声に掻き消された。何個貰ったとか話しながら、俺は幼馴染みの恋の行方を思った。