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Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》

第11章  チョコと幼馴染み:及川




あーあ、何やってんだろうな、あたし。諦めきれないからって、及川の家の前でアイツの帰りを待ってるなんて。


『バカみたいだなぁ……』


ここにいてから、もうかれこれ20分は経ってる。及川の家の門に寄り掛かって、何をするでもなく、ぽけーっと空を眺めてるだけ。

もう帰ろう。モッテモテな及川のことだ、きっと今頃あたしより全然可愛い女の子達に囲まれてハシャいでるんだろうなぁ。

鼻の奥が、ワサビを食べたみたいにツン、とした。視界が、じわりと滲んでくる。


『はぁ……今年も言えないか………』


高校最後のバレンタイン、せめて最後くらいは、好きな人に想いを伝えたかったのに。


「星菜―――――っ!!」

『え……おい、かわ…?』


不意に聞こえた、あたしの名前。それは紛れもなく、あたしの待ち人の声で。ソイツは立ち止まり、ぜぇはぁと荒い息をする。

及川がきっとあたしのために走ってきたんだという事実に、心が弾んだ。





「おま、たせ……及川さんの、っ登場……」


まったく、酷い格好だよ。髪はボサボサだし、息も絶え絶えだし。でも星菜に会えたって、間に合ったってことが、嬉しい。


『遅いよ、及川。待ちくたびれた』


へらりと星菜は笑う。その手に白い紙袋。


「袋の中、まだある?」

『売り切れでーす。それに及川、他の子からもたっくさんチョコ貰ってるんでしょ?』


星菜の指差す先、確かに俺も紙袋を持ってる。でもこんなの、あってもなくても、たいして変わんないんだよ。


「こんなの要らないよ。だってね、俺が欲しいのは星菜のチョコだけなんだから」


星菜の目が驚きに見開かれ、それからやっぱり、へらり。つられて俺もへらり。


『そっか。じゃあはい、及川にあげる』


紙袋の中の最後の1つ、それを俺に渡した。急いで開けると、ハート型のチョコとクッキーの詰め合わせ。


『それ、他のみんなは形違う。ハートにしたのは……っと、徹、だけ……///』

「う、わ……ヤバい、嬉しい///」


星菜をぎゅっと抱きしめる。それから耳に口を寄せ、そっと呟いた。


「ありがとう、星菜。大好きだよ」

『ん…あたしも、好きだよ』


そっと、チョコより甘い、キスをした。




The End.
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