Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第11章 チョコと幼馴染み:及川
3年の花巻と松川、それから湯田と沢内と志戸に渡し、2年のフロアに向かう。と、階段を下りたところで矢巾に遭遇した。
『おっ、矢巾じゃんか』
「あ、星菜さん!」
『はい、チョコです』
「そんな、いいのに!」
そう言いながらも嬉しそうだぞ、矢巾。
『ところで他の2年は見てない?』
「みんな教室ですよ」
『おっけ。じゃ、部活頑張ってね!』
矢巾に手を振り、残りの分を配りに走った。
そして時は流れて昼休み。隣のクラス、6組は覗くまいとしていたのに、好奇心が勝ってしまい、そろりとドアから覗く。
『あ………っ』
やっぱり。思った通りの光景なのに、ひどく落胆している自分がいた。女子に囲まれる及川。アイツはヘラヘラ笑ってる。
『もう、クソ川め……』
泣くな、泣いてたまるもんか。アイツのために流す涙なんて、意味ないんだ。ってか、だいたい彼女でもないのに図々しいじゃないか、あたし。勝手に期待して、泣いて。
もう、いいもん。
くるっと踵を返すあたし。振り向きざま、キラリと雫が宙を舞った。ような気がした。
さっきからキャイキャイと女子が煩い。いい加減静かにしてほしいなぁ。スマイルは浮かべてるけどさ、これけっこう疲れるよ。
「及川くんはぁ、甘いの好き?」
「まぁ、ね」
「えぇ~、じゃあ今度ケーキ屋さんデートしない?美味しいとこ知ってるんだよ~」
曖昧に相槌を打つ。予想してた通りではあるとのこ、靴箱、机、ロッカー、挙げ句の果ては人伝に。至るところに存在を主張するそのカカオの塊には、うんざりしてきた。
俺がほしいのは、そんなゴテゴテのラッピングじゃなくて、高級チョコでもなくて、告白の手紙付きなんかじゃなくて。
たった1つの、義理チョコなのに。
そんなことを考えていると、ドアの所に人影が見えた。誰だろうと悩む間もなく、その影は見えなくなってしまった。身長的には女子っぽかったな。ポニーテールで、星菜にちょっと似てたな。
「星菜、チョコくれないのかな…」
徹くん?という女子の呼び掛けに、ハッとする。それから、なんでもないよ、と上っ面だけの作り笑いを浮かべた。
早く放課後に、なってほしい。
そうしたら、いつものように一緒に帰ろうと誘って、星菜の隣を独占できるのに。