Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第10章 アヤカシとわたし《第3体育館組》
その日、烏は目覚めることはなかった。ただその小さな体がトクトクと脈打っていることだけは分かった。生きようとしている、その事実が幾分か心を軽くした。
「また来てください。その頃にはきっと、この子も元気になってることでしょうからね」
いつもと変わらず、柔らかな笑みをたたえて赤葦さんはわたしを見送った。その後、どうやって帰ったのかはあまり覚えていない。気が付いたらベッドにいた、という感じだ。
自分ても驚くくらい、わたしは傷付いていた。なぜか。それはきっと、ここまで死を感じたことがなかったからだ。小さい頃にあった、アリを踏んじゃったとか、そんなことじゃなくて。何かもっと、身近なものがなくなってしまうような感覚だった。
『あの子も、アヤカシなのかな……』
触れた感じ、それは蛍に触れたのと同じだった。クロさんや木兎さん、リエーフから感じる雰囲気と、酷似しているものがあった。
アヤカシって、死ぬのかな?
生きてるんだし、寿命とかあるのかな。もし死んじゃったら、なんて考えて、頭をぶんぶん振った。ダメ、ノットネガティブ。
そう思ったはずなのに、なかなかあの神社には行けなかった。夏休みはお盆や帰省が重なってそれきり行けず、新学期早々のテストなんかでわたわたしてしまった。
ようやく時間ができたのは、残暑の厳しい9月になってからのことだった。
『烏ちゃん、元気になったかな……』
そう呟いて、坂道を登る。真っ赤な鳥居が見えた瞬間、大空を黒い影が掠めた。そしてパチリと瞬きを1つすると、目の前には同じ背丈くらいの男の子がいた。
スンスンと鼻を動かしてわたしの匂いを嗅ぐと、満足そうに頷いて、にかりと笑った。
「やっぱりお前だったのか!」
『いやあの、どちら様で……』
「おれのこと助けてくれただろ!?」
な、そーだろ!?と目をキラキラさせる少年。オレンジの髪と目と対照に、真っ黒な服装に目がいった。そして、右手に包帯。
『え、もしかして烏ちゃん!?』
「そーだよ!おれ、あのときの烏!」
『わーよかった!元気になったんだぁ!』
「おう!マジで死ぬかと思ったもん!」
手を取り合ってピョンピョン飛んでいると、リエーフと木兎さんもやって来た。それから4人でわいわいと話しながら、待っているであろう3人の元へと急いだ。
