Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第10章 アヤカシとわたし《第3体育館組》
そんな風にして、3ヶ月ほどが過ぎた。暖かかった陽気はいつしか暑くなり、梅雨も終わる頃にはじりじりと焼けるような日差しが連日照るようになっていた。
夏休み真っ盛りの今日も、あの神社に向かう。麦わら帽子で熱中症予防は万全だ。お土産は近所のオバチャンがくれたスイカ。重たいけど、きっとみんな喜ぶだろう。
『たまには回り道しよっかな~』
ジーワジーワ、ミーンミンミンミン、ツクツクホーシツクツクホーシ。セミたちの大合唱をBGMに、わたしは神社の裏手に回る。
赤葦さんの話だと、獣道のようなものがあり、そこから本殿の裏に出られるそう。笹が両脇に茂る細い道を掻き分けて進むと、草むらに黒い塊が見えた。
『何、コレ……?は、ぇ、烏…!?』
草むらに、ぐったりと倒れるのは間違いようもなく烏だった。よく見れば、翼の辺りがどす黒い紅色に染まっている。
どうしよう、どうするべき。誰か人を、いやでも、烏は害獣扱いだ。だとしたら、そうだとしたら、呼んではいけない。なら、わたしはどうしたらいいのだろうか。
考えているうちに、空は薄暗くなってきた。あっという間に大粒の雨が降り出す。ゲリラ豪雨のお出ましだった。
『どーしよ……烏、死んじゃうよ……っ!』
ポシェットからハンカチを取り出し、ぐたりとする烏を包んで、そっと持ち上げる。翼は明らかにおかしな方向に曲がっている。
『お願い、無事でいて…っ!』
もう、赤葦さんしか頼れない。鬱蒼と茂る草とどしゃ降りの雨の中、小さな命の灯火が消えないようにと祈り、わたしは走った。
走って走って、ようやく神社に着いた時には、へたり込みそうになった。社務所に猛ダッシュし、ノックもせずにドアを開ける。
「どなたでっ…星菜さん!?」
赤葦さんとが驚く。床が濡れるのも構わず、ずんずん進み、赤葦さんに烏を出す。
『お願い、助けて!この子死んじゃ…っ』
カァ、と弱々しく鳴いた烏。赤葦さんは血相を変え、蛍やクロさんたちに指示を飛ばす。ぼんやりと光景を眺め、呆然と立ち尽くすわたしの肩を、木兎さんが優しく叩き、リエーフはタオルで拭いてくれた。
助けた理由は、ひどく独善的。赤葦さんが褒めてくれるかなって、思ったから。それでも今は、冷えて震える体で一心に祈った。
どうか、元気でいてください、と。