第6章 【episode.0】それは二人が出会う前の話
そして始まった1on1。女のバスケなんて興味もねえし、見るつもりもなかったのに、次から次へとシュートを決めて行くその女から目が離せなくなった。テレビで見た時も思ったが、可愛いわけでも、胸がデカい訳でもない、何処にでもいそうな女なのに。
「なに、コイツ…!ムカつくんですけど!バスケ経験者とか聞いてないし!」
そう言って、1on1を見ていた二人がコートに入り、三対一。女のくせにやる事きたねえな。男でも早々いねえぞ。どうすっかなー。あん中に割って入るのもめんどくせえし。三対一となれば、ボールを一度取られれば取り返すのは普通の奴には難しい話みたいで、一気に劣勢へと回った。なのに、あの日の試合の時みたいにソイツは笑った。その顔に、ほんの少しだけ興味が湧いた。…んだよ、桐皇にも面白そうな奴いんじゃねえかよ。
結果、三対一という絶対的不利な状況から勝利を収めたその女。まあ、相手が下手くそってのもあったけどな。
「あ、青峰くん!こんな所にいた!」
「げ、さつき!」
「靴無くなってたからまさかとは思ったけど、部活来ないで帰ろうとするなんて信じらんない!もうすぐウィンターカップなんだから、練習サボってる暇ないんだよ?一回戦はテツくん達となんだから!」
「俺に勝てるのは俺だけだ。負けたりなんかするかよ。」
それからウィンターカップが始まり、初戦敗退となった桐皇。三学期が始まり、あの女の事を思い出した。確かアイツも同い年だったな。どこのクラスだ?一組から順番に教室を覗けば、俺のクラスの隣にソイツはいた。
「おい。お前部活は?部活入ってんのかって聞いてんだよ。」
fin.