第5章 いつの間にか横暴な彼に恋してた
そして結局部活が終わるまで青峰くんは体育館に来なかった。皆にお礼を言って体育館を出た。一人で帰る帰り道はなんだか寂しく思えた。
「…青峰くん?」
あの日中学生に絡まれた私を助けてくれた青峰くんは、その公園の入口の前で立っていた。
「今日で最後だったんだってな。」
「…うん。」
「女バスに入んだろ?」
「うん。」
「自分で言っといてあれだけど、」
そう言って青峰くんは私を抱き締めた。
「お前がいねえのはなんつーか、寂しくなるな。」
あの青峰くんが寂しいと言ってくれた。最後の部活には来なかったくせに。
「青峰くん、放して…。」
「放したらお前このまま帰んだろ?」
そりゃあそうだ。寒いし早く家に帰りたい。でも、このまま青峰くんとさよならは悲しい。
「好きって言うまで放さねえ。」
ああ、嫌だな。こんな筈じゃなかったのに。青峰くんのことなんか全然好きじゃなかったのに。私を抱き締めてくれる青峰くんの大きな手が愛しくて、この温もりが恋しくて…放れたくない。
「…言わない。だって、好きって言ったら放しちゃうんでしょ?だったら言わない。ずっとこのままがいい。」
「馬鹿かお前は。ンなモン、好きって言ってんのと同じじゃねーか。」
どうやら私は横暴だけど、本当は優しい青峰くんのことをいつの間にか好きになってしまってたらしい。
「遥香。」
初めて青峰くんに名前を呼ばれ、顔を上げた。そしてそのまま私達はキスをした。
fin.