第1章 横暴なバスケ部エースに目を付けられました
桐皇学園高校に入学し、ごくごく普通に平和な高校生活を送っていた筈だった。あの日までは。
「おい。」
突然机を強い力で叩かれた。ドンと音と共に現れた黒くて大きな手。それに思わず肩が飛び跳ねた。恐る恐る顔をあげると、目の前には隣のクラスの青峰くんがいた。別に私と青峰くんが知り合いと言う訳じゃない。話すのだって今回が初めてだ。彼とはクラスも違えば委員会も違う。中学が同じだった訳でもない。そんな私が何故共通点のない青峰くんを知っているのかというと、青峰くんが有名人だからだ。この学校で青峰くんの存在を知らない人はいないだろう。全中三連覇を誇るあの帝光バスケ部の絶対的エースにしてキセキの世代と言われている彼は県外からこの春こっちにやってきた私でさえ知っているのだから。そんな桐皇学園に限らず有名人である彼が一体私に何の用だと言うのだろうか。私が座っているという事もあってか、ただでさえ背の高い青峰くんは更に大きく見える。
「お前、部活は?」
「へ?」
「部活入ってんのかって聞いてんだよ。」
「…書道部、です。」
そう答えると青峰くんは舌打ちをした。
「今すぐ辞めろ。お前は今日からバスケ部マネージャーだ。いいな?」
「はあ!?」
青峰くんの発言に驚いた私は、そう声をあげると、鋭い瞳で睨まれ、咄嗟に口元を隠した。同い年である青峰くんだけど、背は高いし、黒いし、目つき悪いし、めっちゃ怖い。普通にしてても怖いのに睨まれたら余計怖い。
「放課後、体育館来いよ。いいな?」
そう言った青峰くんは私の机に入部届を置いて教室を出て行った。
「遥香、アンタ何したの!?」
そんなのこっちが知りたいよ。