第12章 暗躍する者嫌う者
「へぇ!じゃあハヨンは今のところ、寮母さんみたいな女官に助けて貰ってるんだな?」
「そういうとこ。」
剣をあらゆる型の通りに振るいながら、息も乱さずハヨンは返事した。
竪琴を抱えながら木の枝に腰かけているリョンは、その返事を聞いて、地上に飛び降りた。
武道でも身につけているのかとでも思うような軽い身のこなしで、着地したときに音も立てない。
「それを聞いて安心した。俺が宴に呼ばれた時も、後宮でもまだ下の方の女官とかが結構あんたのことを話してるし。」
女官にも位があるが、多分ハヨンは新兵といえど専属護衛なので、彼女と同じくらいの地位だろう。
(彼女達も必死なんだ…。)
例えやり方が違っても、女性としての地位を上げていく。それは決して容易なことではない。
(もしなにか言われて、反論したかなっても、努力しない自分が悪いとかは言わないようにしよう。)
ハヨンの稽古の時間は彼女の化粧や芸事の練習の時間だ。
ハヨンの警護の時間は彼女達の料理を運んだり、裁縫する時間なのだ。
ハヨンが稽古を頑張ったから早く昇進したのではない。きっと運が良かったのが一番大きいのだから。
「それにしてもやりにくい世の中だな。」
「そりゃあそうだろ。だってここは王が住まう城なんだから。」
どうやらハヨンは無意識に口に出ていたようだ。リョンが少し呆れたように返事をする
「その上ハヨンは珍しい女の兵士なんだから、余計目立つものだろう?なにかあるのは覚悟しないと。」
「それもそうだ。」
ハヨンはふっと笑った。