第12章 暗躍する者嫌う者
結局風呂も浴槽の湯は抜かれていたので、ハヨンは少しだけ張り直して体を清める程度しかできなかった。
(なんか、腹立つって言うよりも、めんどくさいからやめてほしい…。)
ハヨンは次の日、そう考えながら目覚めた。どうすれば彼女らの攻撃を避けられるか。今日は彼女たちと同じ時間に食事をとって、何を話しているか聞いてみることにする。それに一緒に食事をとれば、食事を捨てられることも無いのだ。
しかしやはり女というもの大声で噂をする勇気はないのか、ひそひそと囁きながらハヨンを見てくるばかりだ。
(決定的なことをしたら、私に仕返しされると思っているのかな…。)
仮にもハヨンは軍人だ。他の女性よりは腕っぷしも強いし、彼女たちからすれば恐いのだろう。
(結局みんながなに話してるのか聞けなかったな…。)
「ちょっと、あんた。まちな。」
ハヨンが食堂を出たとき、後ろから声をかけられた。振り向くとこの寮を取り仕切る中年の女性が立っていた。彼女はどうやら未亡人で、夫を亡くしてから城に仕え始めたらしい。
女官としては珍しい、後宮には入らないと宣言し、仕事だけで位を上げていった女官だ。
さすがにハヨンもここの責任者でもある彼女とは話したことはある。
しかし、特に用事も無さそうな日に声をかけられるのは珍しかった。
「なんでしょう。」
「あんた、昨日ご飯とお風呂どうしたの?」
どうやらハヨンが嫌がらせを受けているのに気がついたようだ。
「昨日は貰い物のリンゴと干し肉食べました。お風呂場少し張り直して体を清める程度に…。でもすいません、燃料の無駄遣いでしたか?」
「いえ、あなたが悪い訳じゃないのよ。あの子達の中に問題な人がいるだけで。ごめんなさいね。昨日見回りの時に気がついたのよ。あなたの食器だけ使われていなかったり、昨日の薪を使った量が少し違ったから。」
ハヨンは彼女がこんなにも周りを見ていたことに驚いた。