第12章 暗躍する者嫌う者
(あれ…?)
ハヨンはガンハンとドマンと共に馬小屋を掃除した後、いつものように女官の寮に戻ってきた。ハヨンは女官でも下の位である女性達と寝食を共にしているので、後宮とはほとんど関わりがない。
しかし、王族の目にとまれば後宮に上がれる事があるので、多くの少女は、着飾ったりしていた。そのなかでも隊服や、訓練服を着ていたハヨンは目立ったに違いない。しかし、彼女達はハヨンに干渉しないだけで、嫌がらせはなかった。
いつも彼女たちより遅くに食事をとるハヨンに、食事は残しておいてくれるし、風呂もちゃんと湯を張ったままになっていた。
(食事が、無い…。)
厨房の釜や鍋の蓋を開けてみたが、何も入っていなかった。
そしてこれがリョンの言っていたことか、と察した。しかし彼女たちに食事を取り上げられるような悪いことをしただろうか。
(全くわからないや。)
ハヨンは諦めて、今日は自室にあるもので腹を満たすことにする。たまに職場の上司にもらう差し入れが残っていたはずだ。
兵士だからかなんなのか、それも日持ちのする干し肉ばかりだが。
(たしか、今日はなぜかリョンにリンゴを貰ったし。)
リョンと話を終えて、立ち去ろうとしたとき、これをやる、と渡されたのだ。
もしかすると彼は女のやり口がわかっているのかもしれない。
(後宮に恋人がいるだけに…。)
なんてことを、ハヨンは少し考えた。
これならもしかするとお風呂も入れないかもしれない。
(原因を探らないとな。)
ハヨンは踵を返し、風呂場に向かった。