• テキストサイズ

華の剣士 王宮篇

第12章 暗躍する者嫌う者


「…っ!なぜあんなところに奴がいる…」


舌打ちをした男は誰もいない廊下を一人で速足に突っ切っている。


(あの者がこの城にいるととんでもなく厄介だ。できることなら早く追い出さなければ…。)


男が追い出したいと思っている人物は、短期間で新兵からリョンヤン王子の専属護衛となった女である。


その時、笠を目深に被った男が廊下の角に断っているのが目にはいる。彼は男の間者だ。


「どうだった。」


「やはり、チュ家の血をひく者でした。簡単に辞めさせては後ろ楯が大きいので、内政を乱しかねません。」


「そうか、ご苦労だった。また何かわかったら伝えろ。」


「は。」


間者は一瞬のうちに姿を消す。そして男は少しの風圧を感じた。



(人がいないか確認して消えろと言ったのに…。まぁ、今回は誰もいなかったが。それにあいつの情報収集能力は稀なものだ。)



男は何事もなかったかのように歩きだした。


(自分の正体に奴は気づいていないのか。気づいていたらかなり厄介だ。)



男は彼女の赤い瞳を思いだし、忌々しいと言わんばかりに顔を歪めた。


(奴も一緒に追い出してしまえる手だてはないか…。どうせ追い出すなら一人も二人も一緒だ。)



男は既にある人物を城から追い出す手だてを考え始めていた。


(もし奴を殺せたなら一番楽だが、奴を手にかけることは無理だ。)



男は自身の手から腕にかけての火傷の後を見る。


(もしあの書さえ手に入れば、この国は俺の者なのに。)


男はもうすぐ人通りの多い廊下に出るので、顔を笑顔に、そして歩調はゆっくりと優雅に変えていく。


彼が暗躍していることは、まだ手下の者しか知らなかった。




/ 219ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp