第1章 剣士への1歩
「自信もなく試験を受けてもしょうがないですから。それに白虎に入りたいと決めたならここは必ず通らねばならぬ道です。」
ハヨンの目は、まさに夢を追うものの目であり、その真っ直ぐな眼差しはヘウォンに若き頃の夢を思い出させた。
あの頃の俺にそっくりだ。理由はどうあれ、生半可な気持ちで白虎の試験を受けに来たのでは無いのだろうな。
最近、待遇が良いのと、一家一同名声を得られるからとさほどやる気も無い若者が試験を受けに来るのを、ヘウォンは苦い思いをしながら見ていた。
久しぶりに芯の強い、どんな訓練も音を上げずについて来るようなど根性を持った奴が来たものだ。
まぁ、入隊するとは決まっていないが。
ヘウォンはハヨンの動きを観察しながら喜ぶ。
と、そのときハヨンがスッと流れるような動きでヘウォンに蹴りをいれようとした。
間一髪のところで彼は避ける。
お返しと言わんばかりに同じ型で蹴りを一ついれると、避けるのが遅かったのかハヨンの腹を擦る。
ハヨンは慌てた様子も見せずに体勢を立て直し、すぐさま拳をヘウォンの腹に向かって突き出した。
細身の癖になかなかの勢いだ。まともに食らったら呻くのは間違いない。
腕でなんとか防いだヘウォンは冷や汗を流す。もし腹に入れられたなら、肋骨で守られていないその場所は大切な臓器が収まっているので、多少体調の善し悪しに影響するはめになっていただろう。