第1章 剣士への1歩
ハヨンはそのままヘウォンの刀を避けながら自分の刀を空中で掴み直し、ヘウォンの顔ギリギリに刀を横に滑らせた。
そしてヘウォンがそれを避ける隙にヘウォンの刀を凪ぎ払う。
「お前、やりおったな?」
ヘウォンがにやりと笑った。彼の刀はハヨンともヘウォンとも遠く離れた位置にあった。
「すみませんが、これから先は拳で戦わせては貰えませんか。」
「しょうがないな。それに俺がどこを動かさないかも見極めたようだな。」
ヘウォンは手首を使わないようにして戦っていた。
最初に刀を凪ぎ払ったときに気がついたが、彼は全く手首を捻らずにハヨンの刀をそのまま受け止めた。
そして、戦う最中も手の辺りだけ堅い動きをしていたので2度目の刀を凪ぎ払ったときは、確信を持って行動した。
ハヨンは手首を動かさなければ手首を痛めてしまう角度で刀を払ったのだ。
そしてヘウォンは怪我を負うわけにはいかず、刀をあっさり手放した。
「まぁいい。俺だってだてに武人をやって来た訳ではない。武器無しでも戦える。」
ヘウォンは腰を低くして身構える。
「しかしお前まで刀を捨てる必要はなかろう。」
そのあと刀を置き、ヘウォンと同じく身構えるハヨンに彼は慌ててそう言った。
「互いに条件が違いすぎては合格しても気が晴れないので。」
そう答えるハヨンに、ヘウォンは笑いをこらえられないようだ。
「合格する前提で戦っておるのだな、お前は。」
ヘウォンは嫌みを言っているのではなく、純粋に嬉しそうだった。