第11章 専属護衛
「ハヨン!お疲れ様、どうだった?専属護衛。」
今日割り当てられたリョンヤン王子の護衛を終えて、白虎の武道場に戻ると、ドマンが開口一番そんなふうに尋ねてきた。
「うーん、初日だからかリョンヤン王子の講義を受けておられる時間だけだったから、特にたいしたことは…。」
「なんか不服そうだな。」
「そりゃそうだよ!だってほぼリョンヤン様の講義を見学していたようなものだもの。」
ガンハンの言葉にハヨンはくってかかるように応える。
「でも最初の仕事はそんなものだよ。俺達が入隊したときは掃除ばっかりだったようにね。」
ドマンはまぁまぁ、となだめにかかった。
ハヨンはふてくされながらも、周りをみると、この時間の割には人が多く、暇をもて余しているようにも見える。
「ねえ、今日何かあるの?」
「ああ、俺達新隊員は、少しの間、各領主のもとに行って、研修するんだ。多分、ハヨンは違うと思うけど。」
「…白虎って王族の専属護衛と、城内警備だよね?なんでまた地方に…。」
「将来護衛として王族の方と領主様のところに訪問する場合があるだろう?その時、反乱や他国が攻め入ったとき逃げるための経路を確認したり、そのついでにその地方の様子を伝えることになってるんだ。逃げるときには山道を使うとか、わかってる方が断然いいし、領主が人民に信頼されているかも知っといた方がいいからな。」
ガンハンが丁寧に教えてくれる。あまりにも淀みなく話すので、ハヨンは感心した。
「ガンハンって、滅多にない座学、結構楽しんでいるよね。もしかして役人の方が向いてるんじゃない?」
ドマンがそう言うと、ガンハンは馬鹿を言え、と返す。
「これは白虎に関係あるから覚えられるんだ。もし役人のあの難しい試験…なんだったっけ?」
「科挙。」
確かに軍関係はからきしらしい。ほぼ常識と言えるようなことを忘れていたので、ハヨンとドマンは呆れながら一緒に答えた。