第11章 専属護衛
公務を任されているといえど、リョンヤン王子も17歳。あと一年ほどで元服を迎えるが、それでもこの国の上に立つ者達として学ぶことはたくさんある。
それゆえリョンヤン王子は大抵午前中は講義を受けて過ごすのだ。ハヨンはまだ、危険性の低い仕事からということだろう。今日は午前中の護衛をすることになっていた。
「私に教えてくださるイルウォン殿は、宰相と私の教育係を兼任されてるんですよ。厳しいお方ですが、とても丁寧に教えてくださいますし、頼りになる人ですよ。」
「そうなんですか。私、宰相とまだお会いした事がないので、少し緊張しています。」
戸口に立つハヨンに、リョンヤン王子は卓に座りながらもいろいろと声をかける。初任務のハヨンの気をまぎらわせるためだろう。
ハヨンがいつでも戦闘態勢に入れるような姿勢でいると、
「大丈夫ですよ、ここの部屋にたどり着くまでの廊下は至るところに衛兵がたっています。ここではその衛兵を全員倒して、それでもここにやってくる者しか侵入できません。」
と、仮にもこの前まで命を狙われていたとは思えない肝の据わったことを言うのである。
そしてこのようなやり取りが続いているのだが、ハヨンはひやひやした。
もしその万が一があったらどうするのだと。
リョンヤン王子は穏やかで、あまりにも危機感のない人物のようにも思えてくる。
(これから先、私がしっかりしなければ…。)
ハヨンは少しやりきれない気持ちになった。