第11章 専属護衛
「失礼します。」
「やぁ、ハヨン。これからよろしくお願いします。」
「はい。」
ハヨンが執務室に入ったとき、どうやらリョンヤンは公務中だったようだ。
書物に筆を走らせていた手を止める。
「ハヨン、あなたは強い女性だと思います。力もそうですが、心も。ヘウォン殿やハイル殿から聞きましたが、あなたも入隊時はいろいろとあったそうですね。」
ハヨンが専属護衛を任せられる人材かどうか話し合うときにいろいろと聞いたのだろう。でもハヨンにはあんなこと、とるに足りないことだった。王族の人に恩返しができればそれで十分だったからだ。
「もしかすると、異例な大出世ですから、また羨む人がいるかもしれません。あなたが私を守ってくださるように、私もあなたのことはできるだけ守りたいと思います。もし何かあったら、気兼ねなしに相談してくださいね。」
「はい。」
リョンヤンの優しい笑みが伝染して、ハヨンも笑顔で答える。しかし、きっとそんなことしないだろうな、とも思っていた。
(そんなちゃっちいことでこの方の手を煩わせる訳にはいかない。)
今日二人に嫌がらせを受けるかもしれないと言われてしまったハヨンだったが、これまでのことが自信になって、それならかかってこい、とも思えるほどの余裕だった。
「では、今日はまず、私は今から講義の時間ですが、護衛、よろしくお願いします。」
ハヨンは今日から始まる新たな生活に胸を踊らせた。