第1章 剣士への1歩
「何だ?かかってこないのか?」
ヘウォンは挑発的に笑う。
刀を構えてから、ハヨン達はどちらも長い間、間合いを詰めず、じりじりと進んでは戻るを繰り返していた。
「何も考えずに出てしまってはねじ伏せられてしまうのがおちですよ。」
ハヨンはそう答えながら一歩足を踏み出す。
ヘウォンもそれに合わせて一歩下がった。
ハヨンはヘウォンが体のどの箇所を動かしていないのか、素早く目を走らせる。
(どうしよう、何を使っていないのか全然掴めないな…。)
「こういうときは、思いきって一歩踏み出すのも重要ではないか?」
「そうかもしれませんが、あまりにも危険すぎるのでね。」
ハヨンはそう言って刀を突き出した。
ヘウォンは飛び退く。
(あ…!)
ハヨンは大きく目を開く。そしてすぐさま突き出した刀を元の位置に構え直し、片足を前に出す。
「お、遂にだな?」
ハヨンはヘウォンのその問には答えず、彼の刀を彼女の刀で凪ぎ払おうとする。
「そんな力で凪ぎ払おうとするなんて無駄だな。」
ヘウォンはハヨンの刀を受け止め、刀を合わせたままじわじわと二人は動く。
この状態はハヨンにとってはかなり不利だった。いくらハヨンが鍛えているとはいえ、男その上武人相手に腕力が叶うはずがない。
ハヨンはジリジリと後退していく。
遂に壁際まで後退し、ハヨンは歯を食い縛る。
「降参か?」
「いいえ。」
そのとき、ハヨンの手から刀が離れ、宙を舞った。