第10章 リョンヤン王子
「あんなに自信満々に入隊試験を受けに来た人が、これから先、王族の方とお会いする機会もあるから慣れなくてはならないのに、こんなに緊張してるなんて。俺の考えていたハヨンさんとはやはり少し違いましたね。」
ハイルはくすくすと笑っている。ハヨンは少しむっとして、
「いけませんか?」
とやけになって尋ねてみる。
「いえいえ、年相応で安心しました。初任務も難なくこなし、いつも泰然自若としていては、私も勝てる所が何もないように思いますから。」
ハヨンさんにはまだ、抜かされたくないですからね。と言ってるのは、ハヨンを期待しているからか。
「もう少し待っていてください。私、ハイルさんを追い抜かしますから。」
と嬉しくなって、ハヨンは少し冗談を言ってみる。
「それは怖いですねぇ。」
そうこうしているうちに、王子の執務室の前に着いた。
「ハイル様とチュ・ハヨンですね。今確認を取ります。」
戸口に立っていた衛兵が執務室の中に入る。
暫くして彼は出てきて、ハヨンたちを中に入れた。
「この前はどうもありがとう。おかげで助かりました。ハヨン殿」
リョンヤン王子はハヨン達が頭を下げているところに近づいてくる。
「そんなにかしこまらないで、楽にしてください。」
そう言われて顔をあげると、リョンヤン王子は優しそうな笑顔だった。
「先ほどのお二人の会話、執務室にも聞こえていました。上司と部下の関係だと聞きましたが、仲がよろしいんですね。」
上司と上手くいくことはいいことです、とリョンヤン王子は言っていたが、ハヨンはあの会話を聞かれたのか恥ずかしくて仕方なかった。
(…リョンヤン王子にふざけているところを聞かれてしまった…!)
ハヨンは今にでも顔から火でもでそうだった。