第10章 リョンヤン王子
「さて、今日私があなたを呼んだのは、お礼を言うためだけではないんです。」
(お礼を言うにしては大袈裟だなって思ってた通りだな。)
ただお礼を言いたいのなら、忙しい王子の身なのだから、従者に手紙の1つでも書いて、持っていかせればいいのだから。
「もうハイル殿とヘウォン殿には伝えているんですが、ハヨン殿、私の専属護衛の一人になってはもらえませんか。」
(…ええっ!)
さすがに一足飛びで専属護衛を頼まれるようになるなんて思ってもみなかったので、ハヨンは心底驚いた。
「私、あなたの太刀さばきには惚れ惚れさせられました。あなたのような方に守っていただけるなら、怖いものなしです。」
ハヨンはリョンヤン王子に、おしとやかな印象を持っていたのだが、少し興奮ぎみに話すリョンヤン王子の姿を見て、彼の無邪気なところを垣間見た気がした。
「リョンヤン王子は、武術を学ぶのがお好きなんですよ。」
「まぁ、私は体が弱いので、見るのが好きと言うだけで、実際強くはないんですが。」
と補足したハイルの言葉を聞き、少し照れたように話すリョンヤン王子。
上からもの申すようでもなく、優しい雰囲気で、好感が持てた。
「それで、ハヨンさんはどうしますか。」
ハイルはハヨンに真剣な眼差しを向けた。
これはハヨンの言葉で大きな事が一つ決まるのだ。何しろ、この国の王子に関わることなのだから。
ハヨンは息を整える。
「…喜んでお請けします。」
これはまた、新たな歴史の始まりだった。