第10章 リョンヤン王子
「それで、私と会いたいと仰っている方はいったい…。」
「リョンヤン王子だ。」
ヘウォンの執務室にやって来て、ハヨンは少しそわそわしながら聞いてしまう。
「この前のお礼を言いたいとのことだ。」
「お礼、ですか。私のやるべき仕事を果たしたまでですので、そう言われると何だか不思議な気もしますが…。」
「それでリョンヤン王子は明日の朝、お前に会いたいんだそうだ。予定を空けておけよ。」
「承知しました。」
ハヨンはその後ヘウォンと明日の段取りの打ち合わせをして、退出した。
そして翌日。公式の出来事でなく、あくまでも王子の私的なお礼なので、かしこまらなくても良い、と王子からのお達しだったが、訓練服では示しがつかないために、隊の制服を着る。
白虎と同じ白い衣は、ハヨンを晴れ晴れとした気持ちにさせた。
「えらくがちがちですね。そこまで緊張しなくとも大丈夫ですよ、ハヨンさん。」
今日の付き添いに来てくれたハイルはやや呆れた顔をする。
「で、でも、私王族の方と直接言葉を交わすのは初めてなんです。」
城に入るまでは王の顔さえ知らなかった。そんな遠い存在の人達とこんなにも急に言葉を交わすなんて、ハヨンには、考えただけでも目が回りそうだった。
「まぁ、確かにそうですね。しかし、あなたが珍しく取り乱しているようで驚きました。」
ハイルはハヨンを面白そうに見ていた。