第10章 リョンヤン王子
「それで、犯人は何者だったんですか?」
ガドンに呼び出されたハヨンとあの日、花の間の辺りを警備していた兵士達はようやく犯人の事情を証して貰えることになった。
ようやく、といっても、ハヨンは下っぱの下っぱなので、王族に深く関わることを教えてもらえるかも分からなかったから、゛まさか゛、と言った方が正しいかもしれない。
「あいつはやはり、踊り手のヒョヌンだった。どうやらリョンヤン王子に反感を持つ庶民の一派が寄越した刺客だったようだな。」
(リョンヤン王子に反感を持つ人もいるのか…)
やはり王族になると存在するだけで邪魔と判断され、会ったことも無いのに憎まれたりするのだ。
「ハヨンはまだ、新人だからわからないだろうな。これはあまり表だって言いたくはないんだが、やはりこの城でも派閥があるんだな。」
ガドンは部屋の外に声が漏れないよう、少し声の音量を下げる。余程矢面には出せないことなのだ。
「この国はな、王が認めた者が次期王になるんだ。例えば今の王だって5人兄弟の末息子だった。だから表向きはリョンヤン王子が第一王位継承者だが、今からでも新たに王子が生まれれば、その王子が次の王かもしれない。
それで、次の王は誰々が良いって臣下も国民も好き勝手に言って、そんなの王のご意志でしか決められないのだったら…。というわけだ。」
ガドンは言葉を濁したが、何を誤魔化したかはわかりきっていた。
「この城の者は大抵どれかの派閥に別れているから、それで揉めることはたまにあるが…。まぁ、周りに流されるなよ。」
きっとガドンも誰が王になって欲しいか、望みはあるだろう。でも私情を挟まず話してくれたので、ハヨンは大いに助かった。