第10章 リョンヤン王子
ハヨンは自室に帰ってから、ようやくリョンヤン王子が昔、自分を助けてくれた恩人だったかを考え始めた。
(顔は…。まぁ、目もととか似ていたし、結構似通っている所は多かったなぁ。)
しかし、彼と親戚だから似ているということも十分ありうるし、何しろ十年も前のことだ。この年頃の者なら顔立ちが変化することもある。
(ただ、雰囲気が全然似てない…。あんな優しそうな感じじゃなくてもっとこう…。生意気な感じだった?)
と思ってから、これじゃあ王族を侮辱してることになるのでは、とハヨンは少々焦った。
でも王族はリョンヤン王子一人ではない。これからはもっと警備の仕事が増えるからと大体の王族の名前は教えて貰った。
(いつかあの人に恩返しできる日が来るといいな…。)
ハヨンは今日教えて貰ったことを忘れないように紙に書き留めていく。
そんなことをしながら、ふとリョンのことを思い出した。
(武闘会の朝以来会ってないな…。それに気が散るからって結構雑に対応した気がする。会ったら謝らなきゃ。)
ハヨンはこの前まで週に一回は会えていたのに、もう十日も会っていないことに気がつく。
(…なんかあったのかな。)
あんな怪しい男、気にする必要など無いのに、妙に心に残った。