第9章 城内警備
(あれなら届くかな…。)
懐に入れて常に持ち歩いていた、ヨウから貰った四角い暗器にそっと触れる。
時間を見つけては練習していたので、なんとか正確に投げることはできるようになった。しかし今回は的ではない。人間なので、弾き返すこともあるし、避けることもある。
ハヨンは目を閉じて集中した。
「すみません、危ないですよっ!」
と他の兵士に声をかけながら暗器を2つ続けて投げる。
1つ目は弾き返されたが、どうやら2つ目は反応が遅れたらしい。
「うっ」
と呻き声が聞こえた。
そしてこのまま木の上に居座り続けるのも危険だと思ったらしい。
木の上から飛び下り、一目散に駆けていく。手負いのはずなのになかなかの速度で走っていて、ハヨンは舌を巻いた。
「ヒョンジェ、ギュシャ、ウンユン、追いかけろ!奴は手負いだ。絶対に追い付け!」
「はい!」
三人が一斉に追いかけるなか、ここの警備隊の責任者であるガドンは避難させていた王子と来賓達に近づき、
「お怪我はありませんか。」
と尋ねた。
「ええ、私たちは無傷ですよ。彼女のおかげでね。」
リョンヤン王子がニッコリと笑うのを見て、ハヨンは役に立てた実感が沸き、嬉しくなる。
「しかし顔が少ししか見えなかったが、誰かあの者を知っている人はいませんか。」
リョンヤンの問に楽団の団長が決まり悪そうに手を挙げる。
「申し訳ありません、今の衣の色から判断すると、彼が踊り手のヒョヌンです。最近入ったばかりだったのですが、上手かったので今回初めて連れてきたのです。まさか彼がそんなことをするなんて…。」