第9章 城内警備
「では私たちは奥で準備を…」
「団長!待ってください!ヒョヌンの姿がありません!」
「なにっ!あいつどこに行った…。」
どうやら誰か楽団の一人がいないようだ。
しかし、そんなことに気をとられている場合ではない。自分の仕事は皆の命を守ることなのだから。
そう考え直して、当たりに視線を巡らす。
「おや、どうかされたのですか?」
どうやら王子と来賓の一行は到着してしまったようだ。
「申し訳ありません!我々の到着が遅れてしまったのです。その上どうやら踊り手がいないようで…。」
団長が慌てて説明をする。
「いやはや、リョンヤン殿下。どうされますかな?」
異国の衣を纏った、来賓らしき者が、端整な顔立ちの青年に声をかける。
どうやら彼がリョンヤン王子のようだ。
「踊り手がいなくとも、演奏はできるでしょう。彼が来るまでは演奏だけでお願いします。」
リョンヤン王子がそう言った時だった。ハヨンは何かの気配を察した。しかしそれが何かはわからない。
ハヨンがはっと我に返ったとき、ハヨンはリョンヤン王子の前に立ち、どこからか飛んできた矢を刀で弾き返した後だった。
「…!侵入者か!」
一瞬静まり返った後、辺りは騒然となる。
「どこからだ!」
「あの高さから見ると、地面から二間(約3M60㎝)以上の高さからいられたぞ!」
(ここ辺りで二間…。)
そのとき強風が吹き、ハヨンの目の端に映る大木に何かがひらりと動いた。周りの者もそれを見逃すはずがない
警備についたものが一斉に大木を取り囲んだ。
しかし彼らが手にしている武器は槍や刀で、大木でも随分と上の方に居座る敵には届かない。
かといって木登りをして上に行こうとすれば、殺されかねない。
どうしたものかと皆が頭を抱えた。