第9章 城内警備
「いえ。別にそれも大したことなかったので、気にしないでください。」
「でもハヨンさん、あなたに色々やらせていた彼らに1週間の掃除当番を任せるくらいはやったって構いませんよね?」
ハイルはニッコリと微笑んだ。人としてなってないようなので、少々罰を課さねばやってられません。
そう言った彼の姿は新たな一面かもしれなかった。
そしてヘウォンの部屋を離れ、ハヨンは花の間で持ち場についた。
「お前があの噂のチュ・ハヨンか。」
「はい。」
「あんたの試合、見ていた。しっかしまぁえげつないことするなぁ。でも期待してるぞ、新人。」
「あ、ありがとうございます。」
どうやらハヨンの戦いかたは誰からでもえげつないと言われるようだった。
花の間に続く廊下の脇に立ち、方々を見渡してみる。
新人を置いておくような場所なのだから、大して危険なところでは無いのかも知れないが、とりあえずあの木は死角になるな、とか、侵入者がやって来たらどの位置を守れば良いだろう、などと考えを巡らせてみた。
今日は確か、第一王位継承者であるリョンヤン王子が来賓と共に食事をするらしい。
年もハヨンとそうかわらないらしいので、もしかして、と説明を受けたときに考えがよぎったが、そんな浮わついた考えは捨てておくことにした。それは任務を終えてからいくらでも考えれば良いのだから。
「…こちらが花の間です。」
そのとき、という話し声が風にのせて聞こえてきた。
どうやら一行がこちらに向かっているらしい。
「すみません、楽団の者ですが。」
花の間に一足早くついた芸人らしき一行が扉の従者に話しかける。
「もう少しでリョンヤン様達がこられます。急いでください!」
「すみません。」
どうやら彼らは予定よりも遅れてついたらしい。