第9章 城内警備
「城内警備、ですか。」
ヘウォンの部屋に通されたハヨンは、ヘウォンとハイルの説明を聞き終えて、まず第一声はこう発した。
「そうだ。新兵では武闘会で優秀な成績を修めた者のみが与えられる大事な仕事だ。」
ヘウォンの説明によると、城内警備は主に白虎と玄武の仕事らしい。籠城など城の警備専門の玄武と王族専属護衛する白虎の主な拠点は城であるから、共に警備するのだそうだ。
「ちなみにお前の配置は…。花の間の近くだ。」
城内の地図をみせられてハヨンは目が点になる。
花の間というのは、来賓が来た際、王族がその来賓と共に食事をする宴の間だ。
「そ、そのような大事なところ、私のような新米が警備をしてもよろしいのですかっ。」
思いがけず重要な配置だったので、ハヨンの声は上ずる。
「心配するな、お前の他にも十分熟練の強者が一緒に警備する。」
つまり場馴れさせるために置かれているだけで、別段戦力とはされないらしい。
場数を踏んでいないので当然の扱いだ。ハヨンは、上司も期待しているのか、と少し期待してしまった自分を少し恨んだ。
しかしこれは自分の力を見せる格好の機会だとハヨンは自分を奮い立たせた。
「その任務、必ず果たして見せます。」
「はい、頑張ってくださいね。」
ハイルはハヨンの真剣な顔を見て嬉しそうに頬笑む。
「そう言えばハヨン。お前はチェソン殿を知っているか。」
「はい…。」
ヘウォンが唐突にそんな問いをしてきたので少々面食らったが、ハヨンは頷く。
「あの人はな、お前が入隊したとき、しきりとお前をおいだしたがっていたんだがな。やっと今回の武闘会であんたの実力を認めたみたいだ。」
「えっ⁉」
そんなことは全く知らなかったので、ハヨンは心底驚いた。
「今まで何かとあんたを追い出そうとしていた輩がいたが、これからはチェソン殿同様、諦めてくれるだろう。あんたが色々と苦労していたのは知っていたが、あんたの実力を見せつける方がてきめんだと思ってな。あまり助けてやれなかった。悪かったな。」