第8章 武闘会
「…っく」
まともに刀を受け止めるなんていつぶりだろうか。
今までの戦いかたは力勝負にならないよう、注意を払いながら攻撃するという方法だった。
ハヨンの記憶が正しければ、ヨウに手合わせをしてもらって以来だ。
(どうしたものか…。)
ハヨンがそうこう考えているうちに、少しずつベクホの刀は沈んでくる。
上段から狙われたことが一番大きな痛手だ。これで力を加えられると、ハヨンは膝をつかなければならない。そうすれば自然と失格の判定が出るだろう。
(…!でも、これは彼も大きな危険を背負ってる!)
ハヨンはあることに気がついた。これを失敗すれば、ハヨンは一瞬のうちにたたきのめにされてしまうだろう。
(でも、やらないで負けるよりずっといい。)
ハヨンは刀を大きく右に引き抜くと同時に右側に飛び退いた。
ハヨンに向かって大きく重心をかけていたベクホは少し体勢を崩しながらも反撃を使用とする。
咄嗟の出来事にも冷静に対処できているのはさすがだった。
ハヨンは重心を戻そうとして勢いの弱くなったベクホの刀を掴み、彼の手から引き抜いた。
「っ!」
男の手から奪うなんてあり得ない、といった様子のベクホの腹に刀を叩き込む。
「…っ。まだまだ…。」
ベクホは拳をすさまじい勢いで振り回す。
ハヨンはぎりぎりで避けて、渾身の力で彼の腿を蹴った。
「…!」
彼は倒れこみ、そのまま立ち上がれなくなったようだった。
上半身は動くものの、下半身は全くのようだ
審判がハヨンの勝利を告げた。
「な、何でだ…。」
ベクホは自由の効かない自身の体に思わずそう洩らした。