第8章 武闘会
(だからと言って私も勝ちを譲りたくはない…。)
ベクホと別れ、もうすぐ試合だと告げてきたドヨンに礼を言ってから、試合会場にたどり着いたハヨンは木刀を強く握りしめる。
(私も国とかそんな大きな規模では考えてはいなかったけれど、あの人に恩を返すために来たんだから…)
邪魔になる袖口をめくり、髪をもう一度ほどけないように結い直した。
(ベクホにはずるいと思われるかもしれない。でも戦いは弱点を多く知った方が有利になる。申し訳ないけれど、弱点を攻めさせてもらわなきゃ。)
彼と話ながら観察したことで得た情報はわずかでしかなかったが、何も無いよりはましだ。
わざわざ彼から出向いてくれたことに感謝しなければならない。
彼の方を見ると、彼は準備運動をしていた。特に緊張しているようでもなく、心理戦に持ち込むのは難しそうである。
審判がハヨンとベクホの二人が準備を終えたのを確認し、二人に位置につくように指示する。
「よおい」
神経を尖らせているせいか、ハヨンはぴーんと音が聞こえるような気がした。
「はじめっ!」
ハヨンが構えていた木刀を横に滑らせようとしたとき、ベクホは剣を大きく振りかぶろうとしていた。
(まずいっ!)
慌ててベクホの木刀を受け止める。
「悪いね、ハヨン。君の弱点を攻めさせていただくことにしたよ。」
ベクホはハヨンの受け止めている木刀にさらに力を加える。
(…!力わざで私を抑える気だ。)
女性にはどうしても補えない腕力で仕掛けてくるようだった。