第8章 武闘会
「ごめん、腿は強く蹴られたりすると歩けなくなる場合があるの。でも、一時的なものだから安心して」
ハヨンはベクホの前に座り込む。
「…。結構えげつないことするな、ハヨン。」
「だってそうでもしないと力負けしちゃうじゃない。」
「…。あんたのやり方は把握した。次は絶対負けないからな。」
そう言ったあと、ハヨンは担架に乗せられていったベクホを見送った。彼が自分を責めなかったのは、実際の戦いは決して相手の刀を奪い取ったり、急所を狙ったりすることを責めたりはできないと知っているからだ。
戦場ではどんな手を使ってでも生き延びる根性がなければ死ぬ。お互いに武道における礼儀などに構ってなどいられないのだ。
(これは、街でいかに生き延びるかにも似ているよね…。)
街でも私腹を肥やし、のうのうと生きている者の大半は汚いやり口で利益を得ている者だった。
戦いでは無いので、もちろんハヨンはそんな汚いやり口はしていなかったが。
(それにしても…。やっとだ、やっと夢への一歩が掴めた。)
この武闘会の優勝者は特別待遇となることが約束されている。これは、他の新兵の中でも一番有利な位置についたとも言えるのだ。
この事にうかれずに、気を引き締めていかなければ、とハヨンは自身の緩んだ頬を戒めた。