第8章 武闘会
「お前がハヨンだよな?俺はベクホ。お前の次の対戦相手だ。」
決勝戦ということで、観客も多く集まるからか、会場を再度設営しなおすために、ハヨンはかなり長い休みをとっていた。
どうしたものかと作戦を練りながら素振りをしていると、声をかけられたのだ。
「そう。私はハヨン。よろしくね。」
ベクホに手を差し出されたので、素直に握手をした。
(…ずいぶんと鍛えてるんだな。)
握った彼の手はまめができていたり、何年も剣の練習をしていたのか、手の皮が人よりもずいぶんと固かった。
「俺はあんたには負けられないんだ。だから下見がてらにあんたに話しかけた。」
「随分はっきりと言うんだね。」
「それは俺がお前を認めているからだ。はじめに女が白虎の入隊を志願したと聞いたときは物好きがいるものだ。どうせすぐに辞めていくだろうと思っていたんだが、今日の試合を見て考えが変わった。あんたは俺にとって一番危ない人物だ。」
(彼には私がそんなに異常者に見えるんだろうか…。)
あけすけにしかも自分のことを危険と言われてしまっては、さすがにハヨンも少しへこんだ。
ハヨンが少し落ち込んだ様子をみせたせいかベクホは慌ててつけ加える。
「俺が言いたいのは、俺は少しでもはやく王に認められたいが、あんたはそれを妨げる大きな要因になるってことだ。別にあんたのことを変人と言っているわけではない。」
「ベクホは…。どうして王に認められたいの?」
「それは…。あまり多くは言えないが、近隣の国が最近不穏な動きを見せている。だから俺はそれをはやく抑えたいんだ。それにはできるだけ上の立場にならなければならない。」
だからお前に勝ちは譲れないんだ。
そう言った彼の目は、燃えているような強い光を持っていた。