第8章 武闘会
「すげえなぁハヨン、ついに決勝じゃねぇか。」
ハヨンが休憩所に立ち寄った時、ガンハンとドマンが真っ先に声をかけてきた。
「うん、頑張ってくるね。ところで二人はベクホってどんな人か知ってる?」
どうやらハヨンの対戦相手はその人物なのだが、同期ではガンハンとドマンしか交流を持っていないので、何も情報を持っていなかった。
「えっ、逆に知らないの。ハヨン。結構噂になってるよ、あいつのこと。」
ドマンが驚いたように言うが、ばか、ハヨンは寄宿舎の場所がちげえから、そういうの届きにくいんだよ、とガンハンがつっこむ。
ハヨンは微妙に気まずい思いをした。
「とりあえずだな、やつは将来有望で、いつかは隊長になれるだろうって噂されてんだ。」
二人の話によれば、貴族出身で容姿端麗、頭脳明晰、おまけに武術も朱雀の新入隊員の中で一番と言われる強者らしい。
(確かに、それは将来を約束されたも同然だな…。)
朱雀の隊長もそれはそれは彼のことを目にかけているようだ。
「彼の武器は何か知ってる?」
「剣だよ。俺、第一試合で当たって、たたきのめされちまった。」
各隊の中でも優秀な白虎にいるガンハンでさえその状況なのだから、彼がいかに強いかがうかがい知れた。
(剣か…。)
自分の十八番(おはこ)であり、彼の十八番でもある武器。
これはそう簡単に先行きは読めなかった。