第8章 武闘会
危ういところでハヨンの横すれすれに槍の先端がかすめる。
(危なかった…。そう何度もこの手が決まるとは言えない…。)
できるだけ相手が間合いや飛びかかるこつを覚える前に奇襲をしかけた方が得策である。
ハヨンは先ほどの攻撃で、一つある方法を思いついた。もし仮に彼が頭に血がのぼりやすい質ならうまくいく可能性がある。
(何もやらないよりはましだな。)
ハヨンは後ろに大きく下がる。怖じ気づきでもしたのかと相手は少しの間驚いていたが、ハヨンが右手の人差し指をたてる。あきらかに挑発する行動だった。
観客がどよめく。どう考えても不利な相手に挑発されたことによって、相手はハヨンの思惑どおり頭にきたようだった。
馬鹿にするな!とでも言いたげな目でハヨンを睨み付け、ぐっと腰をひいたあと、ハヨンめがけて走り、槍をつきだそうとする。
(かかった!)
ハヨンはぎりぎりまで相手を引きつけ、すんでのところで横に避け、ハヨンが避けたことで相手は前に少し体勢を崩す。
ハヨンはそこを狙って相手の足をひっかけ、相手を転ばせてからハヨンの剣先を突きつけた。
「白虎のハヨンの勝利!」
審判をしていた者がそう言って、一か八かのかけだった勝負は勝ち越した。
(作戦だって立派な力だけれど、まだまだ武術の方では自分も未熟だ。今回は新人の彼立ったからこそ挑発にのったけれど、これが手馴れた者だったらそうはいかない。)
今まで王族の護衛のことばかり考えて、暗殺者がまず使わない槍の対策を今までしてこなかったが、これから先のことを考えて槍についても学んだら損は無いだろう。
ハヨンはそう考えながら次のそして最後である対戦相手を確かめに行った。