第8章 武闘会
(ここまでは恐いくらいに順調だったな…。)
ハヨンは武道会館から聞こえる歓声を聴きながら今までの試合をふりかえった。
対戦してきた相手は全員肉弾戦を得意とする兵士ばかり。
しかしこれから対戦する相手はどうやら刀や槍を得意とする者が多いらしい。
ハヨンは今まで、練習相手はほとんどがヨウだったため、刀はともかく槍の類を操る者と手合わせしたことが片手で数えるほどしかなかった。
刀と槍では刃が届く距離が全然違う。
どう考えても刀の方が圧倒的に不利である。
(あまり使ったことがないけど、私も槍を使うべきかな…。でも経験がないから余計に足手まといなだけだ。)
今回の武闘会では数本ある木刀の中から、好きなものを選んで戦う方式だ。
そのため父が造った軽くて切れ味の良いあの自慢の刀も封印されている。
(槍に勝つためにはどうするべきか…。)
ハヨンは残された僅かな時間の内になんとしても思いつかなければならなかった。
(ええと、ヨウさんはたしか…。槍は剣先から相手が握ってる柄のとこまで力が入っていない状態だから、そこを狙えって言っていたな。後は前に突いて攻撃する武器だから、後ろを狙えとか…。)
いくら考えてもハヨンはますます混乱を深めるばかりだ。
今までに無いほど危機的な状況かもしれない。