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華の剣士 王宮篇

第7章 差し伸べられた手


「それはいったい…。」


「お兄様が亡くなったとき、家ではもともとその話が出ていたのよ。女手ひとつでましてや町がこんなにも荒れている時勢に子供を育てるなんて無理があるって。でもチャンヒさんは遠慮してあまりチュ家に関わらなかったから、反対する親族もいてね。ずいぶんもめて。いざ、迎えに行こうとしたとき、あなたたちはもう、あの家にはいなかった。」


父のような鍛冶職人がいないのに、あんな立派な家で住むのはお金がかかって無理だったとチャンヒがいっていたのをハヨンは思い出した。



「ねぇ、ハヨン。チュ家に入ればチャンヒさんも、ハヨンも、何の苦労もなく暮らせるわ。それに女の子がこういう危険な仕事をしなくても大丈夫になるし。」


どうやらドゥナは、ハヨンが稼ぐために命懸けの仕事についていると思ったようだった。


「あなたも年頃の女の子だし、優しい貴族の男性と結婚して、幸せな家庭を築けるよう、見合いの手筈も整えるし。ね?悪くない話でしょう?」


そう畳み掛けるように話すドゥナは全て好意でしているようなのだが、ハヨンにはどうも受け入れがたい話だった。


「おば上。申し訳ないのですが私はこの仕事を好いてやっているのです。それに、見合いに興味はないのです。」


ドゥナは目を瞬かせた。


「私は全てをこの燐の国に捧げるつもりです。しかし、父がどういった生い立ちだったかを知りたいですし、また母が不自由なく過ごせることも望んではおります。ですので今回の件は好意だけ受けとる、という訳にはいきませんでしょうか。そして、チュ家のことを教えてはいただけないでしょうか。」


せっかくの好意をはねのけ、頼みごとをするというずいぶんと失礼なことをしているのはハヨンもわかっていた。



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