第6章 城での生活
「それにしてもお前も勇気あるわ。何で兵士になろうと思ったんだ?」
「私の恩人がこの城にいるの。いつかはその人を守りたいから、白虎に入るって決めたわけ。」
「へぇ!それは誰なんだ?」
ドマンが身をのりだす。悪いが自分も知らないのだと答えようとしたが、
「おい」
と呼び止められたことでできなかった。ガンハンがまずい、というように身を強ばらせる。
声をかけてきたのはガンハンの教育係である隊員だった。
「話したいことがたくさんあるのはわかるが、喋る暇があるなら、先に掃除をしろ。」
「はいっ!すみません。」
ガンハンが頭を下げると同時にドマンとハヨンも頭を下げた。
「ハヨン、だったか。悪いが寮では飯とか風呂の時間が順番で決められていて、こいつらが遅れると周りにも支障が起きる。二人を先に帰らせてもいいか。」
「はい、構いませんよ。」
ハヨンは女官達と共に暮らしているので、そういったことには支障はない。残っている仕事はなかなかに重労働だが、一人でできないわけではないので、快く引き受ける。
「ごめんな、ハヨン。明日からはもっと手早く出きるように頑張るから。」
ガンハン達も申し訳なさそうに立ち去って行く。
その後ろ姿を見ながら、ハヨンは先程のことを頭の中で反芻していた。
(毎年新隊員が厩舎を掃除することになっている。それなら寮での順番が決まっていても間に合うように新隊員の予定は組まれているはず。それに私たちも話をしてはいたけれど、決して手際は悪くないし、遅くもなかった…。)
つまりは先輩達が無理矢理理由をつけてガンハンとドマンを連れていったのだ。
要するにハヨンに仕事を押し付けさせようとする嫌がらせである。
(まぁ、確信はないしなぁ。)
ハヨンは古い干し草を運び出すのを始めた。