第6章 城での生活
結局ハヨンは庭を少し散策したあと、もう彼に会うことは無いだろうと彼とのことを記憶の片隅へと追いやった。
そして今、白虎の隊員が整列している前に、新人の二人と一緒に並んでいる。
ハヨンは、自分が女なので、多少は注目を浴びてもしょうがないと腹を括ったつもりでいた。しかし…
(こんなにたくさんの視線がこちらを向くなんて予想してなかった…。)
ほとんどがこちらに目を向けている。整列中なので、私語や目配せ等はないが、なぜ女が、という声が聞こえてくるようだった。
「今日から新しく入る仲間だ。皆、不慣れなことも多いからよくしてやってくれ。あとお前達はわからないことがあれば遠慮なく聞け。以上」
くどくどと長く話すのは苦手らしい。ヘウォンはそうそうに話を切り上げ、訓練の流れになった。
「よろしくお願いします。」
ハヨンの組み手の相手になったのは、ハイルだ。
「はい、こちらこそ。」
穏やかな笑みをみせながらも隙のない構えを見せる彼は、さすがである。
両隣で組み手をしているのは、ハヨンと同じ新隊員のガンハンとドマンだ。ただ、組み手の相手はハヨンと違ってハイルのような年長者ではなく、ハヨンたちとそう変わらない年の隊員だ。
(もしかして話しやすいようにハイルさんが教育係なのかもしれない)
他の隊員もハヨンをどう扱えばよいのか戸惑うのだろう。ヘウォンの気遣いはたしかにありがたかった。