第6章 城での生活
「確か…最短で一ヶ月後でしたかねぇ。隊での規則をあらかた覚えてここでの生活に馴染み始めた頃に行うので。」
(まぁ、今回は特例であなたを試すために一ヶ月後には必ず行っているとは思うのですが…。)
ハイルはハヨンの食いつきを不思議に思いながら心のなかでそう付け足した。この事を言えば彼女は気を悪くしたり、ヘウォンのことを心配するかもしれないので口を閉ざしておく。
「ところで、ぶしつけですがハヨンさんは貴族出身の方なんですか?」
ハイルは今日の仕事の中で最も大切な任務を全うすべく、ハヨン直球で尋ねる。
ハヨンは少し悩むような顔をしたが、口を開いた。
「私もずっと父が刀鍛冶をしていて、よくは知らないんですが、父は貴族出身だったそうです。ただ、職人になっているのに、家族に縁切られた訳でもなく、名前も残ったままで…。なので名乗るときもチュ・ハヨンとして名乗っているんです。」
彼女はどうも不思議な生い立ちのようだった。しかしチュ家はこの燐で一つしか無いから、どう考えてもかなりの上流貴族の血をひいているわけだ。
ただ、チュ家の息子が刀鍛冶になっていたことは知らなかったので、一応チュ家の者に尋ねることは必要かもしれない。
「あの、どうかしましたか?」
ハヨンに尋ねられてハイルははっとした。ここで考え込んでも彼女に怪しく思われてしまう。
「いえ、何でもありませんよ。ては、私はこれでおいとまさせてもらいますね。」
ハイルはにこやかに笑って彼女の部屋から出ていった。
このあと、彼が女官達に囲まれてしまったのは言うまでもない。