第1章 剣士への1歩
「受験者の皆、よくここまで来られたな。さて、皆もよく知っておるとは思うが、ここはどの部隊よりも1段と試験が過酷と言われる白虎だ。だがここの試験はどこの試験よりも単純明快。何か難しい問題が出されるわけではない。」
白虎の隊長、ヘウォンが整列している、試験を受けに来た者達に快活に話す。
その受験者の中に、勿論ハヨンの姿もあった。
「それはどんな手を使ってもいい…。この隊長俺に勝つことだ。」
ハヨンの周りに立っている受験者達はざわめいた。
「そんな無茶な!白虎最強のヘウォン様に勝つなんて…。」
「みんなすぐに伸されちまうだろ…!」
「静かに。」
ヘウォンが咳払いと共にそう一言注意するだけで受験者達はシンと静まり返った。
ヘウォンはそれほどに一目置かれている武人なのだ。
「さっきも言っただろう。どんな手を使ってもいい、と。お前らが持ってる剣なり槍なり何でもいい。そいつら使って俺を倒せ。つってもお互い重傷になったら入隊試験の意味がねぇから、どちらかが戦闘意欲を失うか、膝をつく、もしくは武器から手を離すまでな。」
ハヨンはその言葉を聞いて、自分が腰から提げている刀の柄をぎゅっと握る。
(父さんの刀を使うときがきた…。)
ハヨンは少し気分が高揚する。
「まぁ、さすがにこれだけじゃあお前らが不利だ。だから俺は…。弱点を作る。」
ヘウォンの言葉に受験者達は首を傾げた。
「俺はある部分を使わないで戦う。だから、そこをいち速く見つけて戦えばお前らは勝算が上がる。」
「例えば…俺が右手を使わないようにして戦っているとしたら、お前らが左手も使えないようにすれば俺は手での攻撃が不可能だろう?」
皆が一様に納得した顔になる。
「ちなみに、ヘウォン様の作る弱点は…。」
一人の受験者がおそるおそると手を挙げて質問する。
「勿論教えるわけが無いだろう!そこまで言っちまえば俺は攻撃され放題だ。」
そうヘウォンに豪快に笑いながら返された彼はがっくりとうなだれた。