第5章 長の議の間で
「なんせはじめての女人の兵士だからな。初めは反発するものも多いだろう。なら、やつらを信じたいが、まだ未熟なやつらに任せては彼女に嫌がらせをするやつもいるかもしれん。不馴れな環境で相談相手といえば教育担当の者だろう。彼女が悩みを溜め込めずに言える相手がいいと思ってな。」
「ヘウォンさんがされてはどうです。」
「お前も知っての通り、俺は女の扱いが下手だ。女でなくとも些細な悩みに気づくなんてこと、今まで上手くできたためしがない。」
ヘウォンは今まで数多くの女性を怒らせた。目上の者なら、まだ相手を敬うのでヘマはしないのだが、どうもやたらと親しげに話しかけたり、女性の繊細な心を逆撫でてしまったようだ。
何度か想い人ができたが、必ず最後は我慢の限界だと女性の方から別れを切り出されていた。
強く、勇ましく、おおらかな性格ゆえ、男性からは尊敬され慕われるのだが、女性からみれば豪快ゆえにがさつで、声もおおきく、ちょっとしたことに気がつかないという印象を持たれてしまうのだ。
「でもお前は女の扱いをちゃんとこころえているだろ?揉め事なしに女をとっかえひっかえしていると聞くしな。」
「ちょ、ちょっと待ってください。俺がまるで女たらしみたいな言い方、やめてくださいよ。」
「違うのか?」
「違います。」
ヘウォンに妙な噂を知られていることを知り、ハイルは慌てて弁解する。
「王都から帰るとき、いつのまにか女が後ろからこっそりついてくることがあるんですよ。いつも上手いこと言って追い返してはいるんですけど。それを見た兵が勘違いしたのかも知れません。」
「…。どのみちお前は女から好かれる体質のようだな。羨ましい。」
もう子供がいてもおかしくない年頃なのに、今でも独り身のヘウォンが少し恨めしそうに呟いた。