第5章 長の議の間で
「しかしまぁ、断る理由は特にないので、引き受けます。」
ありがとうと言うヘウォンにそのかわりまた飯を奢ってくださいね。とハイルが言うと、彼はうっ、と言葉を詰まらせた。
「念のためにチュ家の方に関わりがあるかどうか尋ねた方が良いですね。娘がいるという話を聞いたことが無かったので。」
貴族の中でも指折りの名家であるチュ家は、子供でも宴に参加することが多い。しかしここ10年は、一人も娘を見ていない。娘は全員他の家に嫁いだし、もう何年も息子しか生まれていなかったのだ。
「あの娘、いったい何者なのでしょう。」
「あいつは何から何まで普通にはさせてくれないようだな」
ハイルの呟きにヘウォンは楽しそうにそう返す。
「ヘウォンさん。楽しんでばかりじゃいられないかもしれませんよ?」
どうも一波乱ありそうだとハイルは思えてならないのか、ヘウォンを嗜めた。
(チュ・ハヨンか…。彼女に寄ってこの王宮は吉に転ぶか凶に転ぶか…。)
ハイルは歩調を速める。
「おい、ハイル。どこに行くんだ?」
「チュ家の家系図を見に書庫へ」
彼女がここに来る前に不安な要素はすべて消した方がいいのだから。