第5章 長の議の間で
「俺にできることなら引き受けますよ。」
「ハヨンの教育担当と身元調査を頼んだ。」
「…。ヘウォンさん…。なぜそんな大事なことを忘れていたんです!?」
合格した直後、試験官は本人の身元について尋ねるのが規則となっている。
敵国や、王家に恨みを持っている一族の者は危険人物とされ、合格を取り消されるのだ。
また自分の身元を名乗ったとしても、試験官は合格者の身元を調査し、偽りがあれば疑わしき人物として、不合格とされる。
ハイルはもとは名のある武家の息子だったので、何も問題無かったが、自分の生まれによって合否を変えられるのは差別だと愚痴をこぼす同期もいた。
王族に最も近い部隊の白虎はなおさら身元について厳しかった。
「女だという衝撃が大きすぎてな。あと、異国の者かどうかが気になって、それ以外のことがすっぽぬけたんだ。」
「全く、あなたって人は…。」
ハイルは思わずため息をつく。
しかし自分も女性であることばかり気にして、その場でヘウォンに注意をしなかったことを思いだし、自分もまだまだ未熟だと叱咤した。
「まぁ、貴族の出自でありそうなので、問題はないかと思いますがね…。」
彼女はチュ・ハヨンと名乗っていた。苗字があるということは、貴族の血を引くはずである。多少衣装が簡素なものだったので、一族の財政はなかなかに危ういのかもしれない。
「しかし、何で俺が教育担当なのです。去年入隊した者が教育担当をするのがしきたりでしょう。」
そう尋ねるとヘウォンは少し申し訳なさそうな顔をした。