第5章 長の議の間で
「面白いと思った。」
「なんですって?」
耳を疑うような理由で、ハイルはすっとんきょうな声をだす。
「今まで女の兵士なんて一人もいなかったからな。あいつが女だと知ったとき、もしかするとこの国が大きく変わるきっかけかもしれないと思ったんだ。あのときは思わず興奮したな。」
たしかにハイルにも何か変わるかもしれないということを感じとることはできた。
彼女にはそこらの町娘からは感じることのできない何か大きな夢に向かってひたすら走っていくような熱意があったからだ。
「それに、ちゃんと理由はあるぞ。彼女の存在によって、警護の方法が大きく変わることがあるかもしれん。例えば警護で宴に出席しても、いかつい男ではないから、客に恐怖を与えるようなこともないだろうし、まぁ言い方は悪いが、少し囮になってもらって、敵を倒すこともできるかもしれない。」
男ばかりの軍では、いかつい者が多いので、囮になっても兵士だと敵に一発でばれたり、人質として非力な女官を捕らえられたりする。
もし女性の兵士がいたら、人質になっても冷静に対処できるだろうし、囮になっても油断される確率が高いに違いない。
「…。たしかに、いろいろと警護の方法が広がりますね。」
ハイルが納得すると、だろう?と得意気なヘウォンの
顔。少し子供っぽいところのある上司にハイルは相変わらずだな、とため息をつきたくなった。
しかし、彼の考えは的確で、流石王の警護を一人で任される人だとも感嘆していた。でもそんなことを素直に言えば、この男はつけあがるので言わないようにしておく。
「それでまぁ、お前を信頼して頼みたいことがあるんだが…。」
ヘウォンが表情を引き締めて、ハイルの目を真剣に見つめるた。